商業誌を出したい人向けの企画書の書き方
こんにちは。ゲームソリューション部の出村です。
さて、このエントリー読んでいる方の中には、将来的に自分が書いた本が書店に並ぶところを人生の目標のひとつにしている方もいることでしょう。 そのためには、いくつかのプロセスを踏む必要がありますが、そのプロセスのひとつに「出版社に向けて、書籍の企画書を書く」というのがあります。 このエントリーでは、過去に書いた書籍の企画書を思い出しながら商業誌の出版に向けての企画書の書き方について書いてみます。
ちなみに、この企画書の書き方は技術系同人誌のような薄い本を執筆する際にも役立つと思うので、この機会に学んでおくのもよいでしょう。
企画書はどこで使われるのか?
このような企画書は、出版社で出版を検討する際の重要な材料として扱われます。特に「出版検討会議」で使われます。この会議では、編集者、営業などの様々な役割の方が同席して開催され、出版社から出すのにふさわしい内容なのか、ある程度の部数が見込めそうかなど様々な角度から検討が行われます。
そこでの確認項目がクリアーになって、企画が通り、はれて執筆が開始できます。
企画書のフォーマットについて
出版の企画書というのは何か決まったフォーマットが在るわけではないです。ここで、私が実際に提出した形式を解説します(実際に何冊か本が出てます)。
項目については以下の通りです。
- 仮タイトル
- コンセプト
- 想定読者層
- ページ数
- スケジュール
- 目次
では、これらについて詳しくみていきます。
仮タイトル
タイトルです。完全に仮です。出版内容を一言でつたえるためのイメージをもってもらうために付けます。 実際の出版でこの通りになることは稀でしょう。
コンセプト
本書のウリとなるコンセプトを書きます。 例えば、「今流行の○○の入門書です」や「○○について実例を挙げて解説した内容です」といった感じです。
現在流通している書籍と内容が似通った本である可能性もあるでしょう。その際は、それら類似書とは何を差別化したものか、といったことを記載する必要があります。
想定読者層
想定している読者層を決めます。具体的には購入を想定している年齢層、想定読者が読書前に持っている経験を書きます。
例えば、まったくの初心者向けなのか、その分野である程度経験がある人向けなのか、といった具合です。 これらの想定読者層から、出版社サイドとしては初版の部数や本のページ数がみえてきます。
ページ数
おおまかにページ数を記載します。ページ数によって、スケジュールや価格などがみえてくるためです。
スケジュール
スケジュールを書きます。 これは、出版社側にだいたいのスケジュールを理解して貰うためです。単著(一人で書くのか)、共著(複数人で書くのか)によってもスケジュールは変わります。それらもあわせて出版社としては把握しておきたいはずです。
あと、特に技術書がそうなのですが、ある意味水物を扱っているのでスケジュールとコンセプトがマッチしているか確認する必要がある、という点もあります。
たとえば「○○という技術を解説した書籍した初めての書籍です」というコンセプトだったとしても、出版が1年半先であった場合は、企画書の書籍が世に出る頃には既に同じコンセプトの本が流通している可能性があります。そうなると、コンセプトとしてはよいのだがスケジュールが見合わないので企画としてはダメ、と判断されることもあるでしょう。
目次案
目次の案を書きます。章立てや、その章の概要について記述します。
これによって全体のボリューム感や、内容の方向性がみえてきます。ただ、実際に執筆することになった場合は、必ずこの目次通りに書く必要はありません。というか、内容の変更や章の追加といった変更がある事が多いでしょう。
企画書サンプル
もう少し理解できるように、仮の企画書を書いてみます。
ここでは、中間管理職向けにAWSなどのクラウドサービスをビジネスに取り入れた際のメリットを理解してもらうための本を企画したと想定します。Markdown形式で書かれているので若干読みづらいかもしれませんが、その点がご了承ください...。
当然ですが出版予定はありません。
# タイトル 管理職のためのクラウドサービス入門(仮) # コンセプト 管理職といったエンジニアリングとは離れているポジションの方に向けて、AWSなどのクラウドサービスとは 一体何者なのか、自分達のビジネスにどのようなメリットがあるのか、といったことを解説した本となります。 「部下からAWSを導入したいという話を聞くが説明を聞いてもよく分からない」 「自社にAWSを導入したいが、他の管理職にどのように説明してよいのか分からない」 といった経験がある方に向けて解説した本となります。 文字を抑え図表を多めにいれ、専門用語を抑え、なるべく理解しやすい構成で進めていきます。 # 読者層 30代〜50代の中間管理職層をターゲットにしています。自分のスマートフォンを所有しており、 クラウドという技術がどういったものかなんとなくは理解しているが、自分達の会社や業務にとって のメリットについてもっと詳しく知りたい方を想定しています。 # ページ数 ページ数は250〜300ページを見込んでいます。 # スケジュール 執筆1年程度、校正などを考えると出版自体は1年半先と考えています。 # 目次案 ## 1章 クラウドサービスとは 概要: クラウドサービスとは、どのようなサービスなのか、どのような場面で利用されているのかを Amazon.co.jpなどの身近なサービスを例にあげて解説します。 ## 2章 AWS、GCP、Azureとは 概要: クラウドサービスとしては、さまざまな企業がサービス提供しています。本章ではAWS、GCP、Azure といった主流のクラウドサービスについて解説します。それらのクラウドサービスの特徴などについて解説していきます。 ## 3章 ...
さいごに
出版社さんに企画を持ち込むという方法もありますので、この書式で企画書を書いて出版社に持ち込んでみるのもよいかもしれません。